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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

お浜はその時、次郎の顔を見ていたが、その眼は、いくぶん涙ぐんでいるようだった。

「すると結局、六人になってしまったな。大巻では、だしぬけに大変だろう。ご馳走はこちらから用意して行くんだな。」

「六人っていうと?」

と、お祖母さんがまたけげんそうな顔をした。

「恭一とお鶴、それで六人でしょう。」

「おや、おや、恭一も行くのかい。」

「次郎がみんなをひっぱり出すもんですからね。」

「そうかい。……次郎がね。……そうかい。」

と、お祖母さんは、やたらにうなずいた。

「どうだ、次郎、ついでにお祖母さんもひっぱり出しちゃあ。」

「ええ――」

次郎は顔を少しあからめて、お祖母さんの顔を見ていたが、

「そうだなあ、お祖母さんも行くといいや。ねえ、恭ちゃん。」

恭一はにがい顔して、じっと次郎を見つめた。見つめられて、次郎ははっとしたように目を伏せた。

(ませっくれ!)

彼は恭一にそう叱られているような気がしたのである。

俊亮も、二人の様子にすぐ気づいた。彼は、しかし、今は次郎の努力を買ってやりたい気持でいっぱいだった。いつもなら、次郎のませっくれた態度が誰よりも気になる彼だったが、なぜか今日は、次郎をそんなふうにみる気には、少しもなれなかったのである。