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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

ところが、正木さんでは、そののろまなところが、かえって気に入ったとおっしゃるのでな。」

「恐縮です。」

「それで、あんたにも、そののろまなところを買っていただきたい、と思っていますのじゃ。のろまなだけに辛抱はいくらでもしますぞ。あんたが無理やり引きずり出すようなことさえなさらなきゃあ、めったなことで、自分からおんでるような、気のきいた女ではありませんのでな。そこは、あんたとちがって、豚のように無神経ですよ。」

「これはどうも……」

「いや、ほんとうじゃ。豚ではちとかわいそうなら、まあ山出しの女中と思っていただけば、まちがいありますまい。」

「何をおっしゃいます。」

「いや、山出しの女中と言えば、あいつにも一つだけ取柄がありますのじゃ。それは漬物がなかなか上手でしてな。あいつの漬けた糠味噌じゃと、お母さんにもきっとお気に召しますわい。」

運平老はすこぶる真面目である。俊亮は、むず痒ゆそうに頬をゆがめた。

「ところで――」

と、運平老は、急に思い出したように、うしろの茶棚にのせてあった一枚の葉書をとって、それを俊亮の方にさし出しながら、

「きのう、次郎君がわしにこんな葉書をくれましてな。