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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
それは、昨日から、そんなかけ声を出さなくってもいいようになったからです。こんどの日曜には、もっとほかのかけ声を教えてください。さよなら。」
俊亮はわけがわからなくて、何度も読みかえした。運平老は、ひとりでにこにこしながら、
「な、どうです。なかなか要領を得とりましょうが。」
「はあ――」
「もうそんなかけ声を出さなくてもよいようになった、という文句には、まさに千鈞の重みがありますわい。」
「はあ。――しかし、私には、何のことだか、ちっともわかりませんが――」
「いや、なあるほど。こりゃ、あんたには、ちとわかりかねますかな、はっはっはっ。」
と、運平老は膝をゆすった。それから、急に真面目な顔をして、
「実を言いますと、わしはお芳を正木さんにお預けしたあと、次郎君との仲がどうだろうかと、そればかりが気になっていましてな。で、お芳に手紙を出して、わしも助太刀をしてやるから一度次郎君をこちらにつれて来い、と申し附けましたのじゃ。ところが、来てみると、二人の仲は案じたほどわるくない。こりゃあお芳にしては上出来じゃ、と思いましたわい。」
「そのことは、私の方にも正木から報らしてもらっていましたので、内心喜んでいたところです。