轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
ほかの児童たちは、もうその頃には、めいめい一本ずつの竹ぎれや棒ぎれを握って、ちゃんばらの真似をしたり、並木の幹や枝をなぐりつけたりしながら、歩いていた。先生は、それに気がつくと、だしぬけに例のどら声をはりあげて怒鳴った。
「おうい、默って立っている木をなぐるのは卑怯だぞうっ。」
「卑怯だぞ」というのは、先生の口癖だったが、次郎には、それがその時いかにも面白く響いた。で、つい笑顔になって先生の横顔を見上げた。先生の眼は、しかし、まっすぐに児童たちの方に注がれていた。
二人は、それからまたかなり永いあいだ口をきかなかった。
次郎は、児童たちのちゃんばらの真似から、ふと、大巻のお祖父さんに剣道を教わった事や、お芳を「母さん」と呼ぶようになったことなどを連想しながら、歩いていた。すると、先生は、ひょいと帽子の上から次郎の頭に手をあて、それをゆさぶるようにしながら、言った。
「本田はいろんな人に可愛がってもらって、仕合せだね。」
次郎は、これまで、自分で自分を仕合せな人間だと思ったことなど、一度だってなかった。また、周囲の人々にそんなふうに言われた覚えも、かつてないことだった。