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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

僕、あのお祖父さんだと、どなられたって怖くなんかないや。」

「どなられたことある?」

「うん、あるよ。僕、あのうちの泉水の鯉をつりあげちゃったもんだから。」

「泉水の鯉って緋鯉かい。」

「ううん、本当の雨鯉さ。大っきいのがいるぜ。」

「ふうむ。そして、その人、何て言ってどなったんだい。」

「ただこらあって言ったきりさ。僕、びっくりしてすぐ鯉を逃がしてやったら、惜しかったなあって、笑ってたよ。」

「次郎ちゃんがつるのをどっかから見てたんだね。」

「見てたんだよ。座敷から。でも、僕にはとてもつれないと思って、安心していたんだろう。」

「そりゃ面白かったなあ。次郎ちゃんより、そのお祖父さんの方がびっくりしたんだろう。」

二人は笑った。それから、恭一は、しばらく何か考えているらしかったが、

「お祖母さんもいるんかい。」

「いるよ。豚みたいに大っきいお祖母さんだけれど、やさしいよ。それから、附属の先生もいるんだ。僕、その人も好きさ。」

「附属の先生? ふうむ……それから?」

「三人きりさ。僕たちの母さんになる人まで合わせると四人だけど。」

「附属の先生って、いくつぐらいの人?」

「よくわかんないけど、三十ぐらいかなあ。