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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页

青空文庫

何か言おうとするが、唇のところで声がとまるらしい。彼は、次第に首を深くたれた。お祖母さんは、それを自分の言ったことに対するいい反応だと思ったのか、手をのばして彼のどてらの襟を合わせてやりながら、

「さあ、早く階下においで。わるいことは言わないから。いつまでもこうしていると、ほんとに風邪をひくよ。」

「僕、いやです!」

恭一は、帛をさくような声で、そう叫ぶと、敷蒲団の上につっぷして、はげしく息ずすりをした。

お祖母さんは、ぎくりとして、しばらくその様子に眼をすえていたが、急に自分も恭一の背中に顔を押しあてて、泣き出した。

「恭一や、お前がそれほど階下におりるのが、いやなら、……もう、むりにおりておくれとは……言わないよ。……だけど、だけど、お前、さっき、なるだけお祖母さんのそばにいないようにするって、お言いだったね。……あれは、ほんとうかい。そんなにお前は、このお祖母さんが、きらいになったのかい。……ねえ、恭一や、このお祖母さんは、……何を楽しみに生きているとお思いだえ。……次郎が……次郎が……お前は、そんなにこのお祖母さんより……大切なのかい。」

「お祖母さん、……ぼ……僕、わるかったんです。