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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 146,773 字 · 294 页
口もききあわなかった。次郎は次第に凝視につかれて来た。少し寒くなって来た。枕時計を見ると、もうやがて十一時だ。あすの試験が気になって来る。彼は、お祖母さんが自分を叱るなら叱るで、さっさと叱ってくれるといい、と思ったが、恭一の背中に押しあてたその頭は、石のように頑固だった。彼はそろそろ腹が立って来た。
(お祖母さんは、あんなことをして、僕の試験の邪魔をしているんだ。)
彼はふとそう思った。亡くなった母に対して、自分でもしばしばそうした押しつよい態度に出た経験のある彼としては、そう思うのも自然であった。また、そのぐらいのことは、実際お祖母さんのやりかねないことでもあったのである。その点では、お祖母さんと次郎とは、さすがに争えない血のつながりであった。しかし、悪魔の心を最もよく見ぬく者は悪魔であり、そして、それゆえに悪魔と悪魔とは永遠に親しむことが出来ない、ということが、もし二人の場合にもあてはまるならば、二人は、何という呪われた星の下に生まれあわせたものだったろう。
時計は容赦なく三分、五分と進んで、もう十一時を過ぎてしまった。お祖母さんはやはり動かない。