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しかばねをくうおとこ

死屍を食う男

葉山 嘉樹

「新青年」1927(昭和2)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,482 字 · 16 页

青空文庫

安岡は、自分自身にさえ気取られないように、木柵に沿うて、グラウンドの塵一本さえ、その薄闇の中に見失うまいとするようにして進んだ。

やや柵の曲がった辺へ来ると、グラウンドではなく、街道を風のように飛んでゆく姿が見えた。

その風の姿は、一週間前、セコチャンが溺死した沼のほうへと飛んだ。

安岡は、自分が溺死しかけてでもいるような恐怖にとらわれ、戦慄を覚えた。が、次の瞬間には無我夢中になって、フッ飛んだ。

道は沼に沿うて、蛇のように陰鬱にうねっていた。その道の上を、生きた人魂のように二人は飛んでいた。

沼の表は、曇った空を映して腐屍の皮膚のように、重苦しく無気味に映って見えた。

やがて道は墓地の辺にまで、二人の姿を吹くように導いた。

墓地の入り口まで先頭の人影が来ると、吹き消したように消えてしまった。安岡は同時に路面へ倒れた。

墓地の松林の間には、白い旗や提灯が、巻かれもしないでブラッと下がっていた。新しいのや中古の卒塔婆などが、長い病人の臨終を思わせるように瘠せた形相で、立ち並んでいた。松の茂った葉と葉との間から、曇った空が人魂のように丸い空間をのぞかせていた。