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みんげいよんじゅうねん

民藝四十年

柳 宗悦

柳宗悦『民藝四十年』。同一底本的分册已合并为一书。收入:民芸四十年、改めて民藝について、四十年の回想。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 182,248 字 · 368 页

青空文庫

一〇

一〇

イエスはパリサイの人々を好まなかった。知に高ぶるからである。知の眼には神の姿が見えにくいからである。明るき智慧も、神の前にはなお暗いであろう。賢さもその前には愚かなるに過ぎぬ。「それ智慧多ければ憂い多し」と『伝道の書』には嘆じてある。

同じように知は美を見る眼とはならぬ。もし知の道を歩まねばならぬなら、衆生は永えに美の都に入ることは出来なかったであろう。だが彼らの無学は、彼らを殺すことなくして活かした。彼らは智慧の持主であることは出来ない。だが無心の持主であることは許されてある。「嬰児は天国においていとも大なる者なり」とイエスは説いた。智慧に小さい彼らも、彼らの無心において、大なる者となり得たのである。よき作の美しさには、嬰児の如き心が宿る。

器に見られる美は無心の美である。美とは何か、何が美を産むか。どうして無学な工人たちに、かかる思索があったであろう。それがどうして出来るか、それに如何なる性質があるか、問われるとも、何一つ答えの持ち合せがなかったであろう。ただそこには堆積せられた遠い伝統と、繰返された長い経験との、沈黙せる事実のみが残る。