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すいちゅうのきゅうでん
水中の宮殿
野村 胡堂
「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页
平泉館一名奥御館の外に清衡の築いた柳の御所、秀衡のいた伽藍の御所、後に義経が頼朝に追われて来て入った高館などの大建築があり、外に家の子郎党の屋敷が軒を並べ、西方には中尊寺、光堂(これは今でも残っております)南方には毛越寺などの巨刹があり、堂塔十、坊舎千という、今から想像もつかぬ繁昌でしたが、義経をかくまった為に、頼朝の怒を買い、文治五年(今から七百四十五年前)天下の軍勢を引受けて戦い破れ、兵火の為に、殆ど残るところなく焼かれてしまったのでした。
これだけは誰でも知っている歴史の表面ですが、立花博士の調によると、藤原秀衡は一代の英傑で、子孫万一の為に、夥しい金銀財宝、古美術品を、平泉館の地下に埋めたというのです。
ところが、その後、平泉の東方を流れていた北上川の流域が変って、西の方に迂回し、平泉館、柳の御所、伽羅の御所、並に高館の一部――藤原四代の栄華の、最も重要な地点の上を流れ、これ等の古跡の大部分は、北上川の流の底になってしまったのでした。これは決して拵事ではありません。詳しい事は平泉の古図と今の地図とを比べて見ればよく判ります。
立花博士は利慾などを眼中に置く人ではありませんが、高館(一名判官館)の南、今は猫間ヶ淵に沈んでいると思われる、水中の大密室を開くことが出来れば、歴史上、非常に有益な参考品