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すいちゅうのきゅうでん

水中の宮殿

野村 胡堂

「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页

青空文庫

「――立花博士は大詐欺師で、刑務所で死んだ。こんな仕事に首を突っ込んでいると、日当にはなるだろうが、そのかわりいつ警官が来てみんな縛るかもわからない――って言った奴があるんだ。人夫の半分以上は土地の正直な人達だから、驚いて引揚げてしまったんだよ。賃金を倍にすると言っても駄目だ」

「お兄様」

「僕はもういやになったよ」

「お兄様そんな事では駄目よ、東京へ電報を打って、百人も人夫を呼ぶんだワ」

「そんな事が出来るかい」

「出来ますとも、三日経たないうちに来るワ。東京は人が余って困っていると言うじゃないの」

燿子は大変な事を言い出しました。日本の誇と言われる大選手も、頭のよさではどうしても妹にかないません。

「どうしたんでしょう。人夫が一人もいないのは?」

間もなく綾子も気がつきましたが、燿子は――東京の人夫を呼ぶことにしたから、――と当らず触らずの事を言って、綾子をなだめておきました。

「だが、こうして待っているのは馬鹿馬鹿しいなア。二日でも三日でも真剣に仕事を経験すると、ジッとしていては、罰が当るような気がする」

健一はフラリと河原へ出て行きましたが、三十分ばかりすると、汗だくになって飛んで来ました。