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すいちゅうのきゅうでん

水中の宮殿

野村 胡堂

「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页

青空文庫

唐崎荘之介とその秘書杉村、ロイド眼鏡の釣男などは、どこへ行ったか一日姿を見せず、一関の写真屋も、日の暮れるまで引きのばしの写真を届けてくれません。

「どうしたんでしょうね、お兄様」

そんなことを言っているところへ、隧道の入口を見張らせていた男が飛んで来て、

「隧道の中へ誰か入ったようです、私と交代で見張っていた男が、入口で目を廻していますよ」

青い顔をして報告します。

「それッ」

と隧道の入口へ行って見ると、成程一人の男が、重い物で頭をやられたらしく、二、三人の仲間に介抱されて、まだ悪心地に横たわっております。

「僕は中を見て来る、二人はここにいるがいい、危いから」

健一は燿子と綾子にそう言って隧道の中へ飛込むと、

「大丈夫よ、入口に、こんなに大勢いるんだもの」

二人の少女も続いて入ります。

隧道がつきて、地下の広場へ一足踏込むと、

「オヤ?」

健一は立止りました。

「何? お兄様」

「毒瓦斯の匂いだ、危いっ、引返せッ」

二少女を小脇に掻込んだ健一、摺剥や瘤を拵えるのも構わず、盲滅法に隧道の入口に引返しました。

「あれが毒瓦斯? お兄様」

「あ、間違いもなく毒瓦斯だ、あの匂は学校の実験室で何べんも嗅いで知っている」