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すいちゅうのきゅうでん

水中の宮殿

野村 胡堂

「少女倶楽部」1934(昭和9)年6月〜8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,533 字 · 52 页

青空文庫

「それは判っております」

「銅板も返そうか」

唐崎荘之介はよくよく折れた様子です。

「いえそんなものは要りません。それより、書生の花井を刺したのと、堤防を壊して私達を殺そうとしたのが誰だか、それを秘書の杉村さんに聞いて下さい」

健一は最後の疑問を投出しました。

「僕を疑ってるようですが、それは僕じゃありません、書生を刺したのは兎も角、堤防を壊したのは、時々あの辺で釣をしていた、ロイド眼鏡の男です」

「えッ」

秘書の杉村の言うことは、全く思の外でした。丁度その時、

「一関から写真が届きました」

お高が持って来た引伸写真の包、引き割くように開いて見ると、中から出たのは四切の写真で、平泉館の地下の宝庫の絵図面が、銅板の原図よりも明瞭に見られるばかりでなく、端っこの方に、小刀か何かで引っ掻いた文字。

――滝山が私をねらっている、管が切られた、もう死ぬ――

乱れに乱れてはおりますが、いともはっきり読めるのでした。

「あッ」

お高さんは床の上へ崩折れました。引伸写真を覗いていたのですが、夫が断末魔の苦しみのうちに、自分を殺した相手の名を書いたのを見て気を喪ったのです。

「そう言えば、正平爺やを殺したのも滝山に違いないワ、あの映画館のプログラムが三冊あったのは、矢張り、途中で一人だけ出て、爺やを殺して又映画館へ帰ったんだワ」