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みとばいふ

水戸梅譜

山本 周五郎

「芸能文化」1942(昭和17)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,607 字 · 25 页

青空文庫

さまであった。ただそればかりならよいが、なかには仕官をたのむのは口実で、本当はいくばくかの合力にあずかろうという浪人ものもいた。近頃ではむしろそういう者のほうが多いくらいだったので、筋のわからぬ者はたいてい些少の銀を与えてかえすことになっていた。

「また幸いわたくしには伜がございます」浪人は少し間をおいて云った、「当年まだ八歳の幼少ではございますが、性質もよろしくからだもごく壮健でございますから、やがてはお役の端にもあいたつべきかと存じます、憚りながらこれも御前までおとりつぎをおたのみ申します」うわのそらで聴いていた主税は、この言葉でちょっと眼をみはった。これまで随身をたのみに来た者は誰でもおのれの芸能を申立てはした、戦場における功名とか武芸の才とか、学問の能力とか、そういうことは申立てたが、自分に子供があると自慢をした者はなかった。――いったいこの男は本気かしらん。主税は少しばかりあきれて見返した。浪人はもちろんまじめだった。すこし不安そうではあるが、端座した姿勢は毅然たるものだった。しばらく待てといって主税は奥へあがった。

光圀は小姓のものと碁をかこんでいた、そのとき三十八歳の壮年でまだ後年の円熟さには欠けていたが、そして名宰相としての世評にあやまりはなかったけれど、生れながらに水戸家の公達であったから