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みとばいふ
水戸梅譜
山本 周五郎
「芸能文化」1942(昭和17)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,607 字 · 25 页
五
「あの母が」高い声では笑ったこともない母に、そのような烈しいところもあったのかと、五郎兵衛はかなり意外に思った。
「そのときは話もきまらず、そのまま帰って来たのですが、それから三日め、ちょうど一昨日でございます、河田の代官所からお役人がみえまして、訊ねたいことがあるからと、おばさまをおつれ申してしまいました」「どういう仔細か申しましたか」「いいえ、千波ヶ原の者がいっしょになんどもお下げ渡しを願いに出たのですけれど、仔細も聞かせずかえしても下さいません、……今日もみんなで代官所へまいっておりますの、もうとうに帰る時刻でございますが……」
「そうか、それであらましわかった」おそらくはくるまや六造があらぬことを訴訟したのであろう。それなら、母をとりもどすのといっしょに、年貢のこともはっきり定まりをつけなければならぬ、五郎兵衛はそう思った。
五
代官所へいった六人の者はすっかり暮れてから帰って来た。かれらは代官所でなかなか要領を得ないので、帰りにくるまやへ寄って来たのだと云った。五郎兵衛はみんなを炉端へまねいて話を聴いた。「代官所ではどういう挨拶なのです」「それがどうもはっきり致しませんので、いくら嘆願しましても、ただおとりしらべの筋があると仰せられるばかりでして」