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みとばいふ

水戸梅譜

山本 周五郎

「芸能文化」1942(昭和17)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,607 字 · 25 页

青空文庫

七

甚四郎はひじょうに当惑したが、光圀はかまわず出ていって席についた。縁下にいた五郎兵衛はそれがたれびとであるかわかったとみえ、秀でた額のあたりをさっと蒼くした。

「さきほどからの始終は蔭で聴いていた」光圀はずばずばと云った、「答のうちに水戸家臣なりと申した理由がはっきりせぬ、うろんな答弁はあいならんぞ、余は光圀だ、仔細まぎれなく申してみよ」

七

「恐れながら」五郎兵衛は平伏して答えた、「恐れながらお側まで言上つかまつります、わたくしは十六年このかた御当地に住みつき、御領分にたつきを立てております、たとえ御家臣帳にはのぼらずとも、御領内におればお上と申上げるはおひとかた、おのれの覚悟として御藩士なりと心得ておったしだいでございます」

「おろかなことを申すな、領内におればとて仕官もせずに藩士と云う法があるか」

「それは、……それは……」

「五郎兵衛と申したな」光圀はきっとねめつけながら、「さようにまぎらわしい答弁を致すと、そのほうだけにはかぎらぬ、当所にとどめある母をも共に屹度申付けるが、よいか」

「恐れながら……」

「申せ、まことの仔細を申せ」

五郎兵衛はしずかに面をあげた。