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しんやのきゃく

深夜の客

大倉 燁子

「モダン日本 九巻一三号」1938(昭和13)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,926 字 · 28 页

青空文庫

が、また冷静に考えると馬鹿々々しくなって、自分に覚えがないのだから、これは飽くまで争わなければならない、という気も起るのです。そこで、なおよく記憶を辿ってみると嘗て妻の母が、冬子を譲治が知る以前に、親友が彼女へ求婚したことがあったと話したこと、親友が余りにも仙ちゃんに敵意を持っていたこと、妻がひどく彼を嫌って避けていたこと、等を思い合せてみた時、彼は思わずハッとして唇を噛みました」

「譲治さんは始めて、親友の奸計にまんまとのったことを、お知りになったのですね?」

「そうです。愛する妻は殺され、自分は罪なくして死刑に処せられる、しかもその敵のような男に、恩人から譲られた財産まで自由にする権利を与えてしまったのか、と思うと彼の憤りは極点に達しました。それから間もなく発狂して、自殺したのです」

「親友はどうしました?」

「譲治の金で相場をやり、今は大金持ちになっています」

「女の子は?」

「その事なのです。女の子が成人した暁、必ず譲治を恨むに違いない。恨まれるのは仕方がないけれど、彼女が世間へ対して、どんなにか肩身狭く暮らす事だろう、と思うと堪まらない。どうぞ真犯人を見出して、娘のために父が無罪であったことの証明を立てて頂きたい、という譲治の切なる願いを果してやりたくて、実はお願いに上ったのでございます」