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かそうこくふうけい

火葬国風景

海野 十三

「帝都日日新聞」1935(昭和10)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,334 字 · 37 页

青空文庫

その美髯がたしかに眼の前に見る老紳士の顔の上にあった。

「一宮大将は亡くなられた筈ですが……」

「はッはッはッ」と将軍は天井を向いて腹をゆすぶった。「亡くなって此処へ来たのじゃ。この鼠谷君もそうであるし、君も亦いま、ここへ来られたのじゃ」

「私は死にませんよ。死んだ覚えはありません」

「死なない覚えはあっても、死んだ覚えはあるまい。――それはとにかく、君は死んだればこそ、ほらあれを見い、棺桶の中に入っていたではないか」

将軍の指す方を見ると、八十助のいままで収容されていた棺桶が、いかにも狼藉に室の隅に抛り出されていた。

「ああ、それでは――それでは、やっぱりここは冥途だったんですか」

「そうでもないのじゃ」

「え?」

八十助の怪訝な顔を暫く見詰めていた将軍は静かに口を開いた。

「ここは、つまり、火葬国じゃ」

奇怪な話

「火葬国?」

八十助は怪げんな顔で、一宮大将と名乗る男の云った言葉を叫び返した。

「そうじゃ。火葬国といったが早判りがするじゃろう」と一宮大将は傍らを向いて「どうじゃな鼠谷君。一つ君から、この国柄を説明してやって呉れぬか。なにしろ君が一番よく知っているでのう」