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はいかぐら

灰神楽

江戸川 乱歩

「大衆文藝」1926(大正15)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,262 字 · 27 页

青空文庫

その日はどうだったい。兄さんの死んだ日には」

「やっていたよ」二郎は益々不安を感じながら答えた「だが、ここまでボールを飛ばした筈はない。尤も一度そこの塀を越したことはあるけれど、杉の木に当って下へ落ちたよ。僕はちゃんとそれを拾ったのだから間違いはない、たまは一つもなくなってやしないんだよ」

「そうかい。塀を越したことがあるのかい。無論バットで打ったのだろうね。だが、その時下へ落ちたと思ったのは間違いで、実は杉の木をかすって、ここまで飛んで来たのではないだろうか。君は何か思い違いをしてやしないかい」

「そんなことはないよ。ちゃんと、そこの一番大きい杉の木の根元の所で、たまを拾ったんだもの。その外には一度だって塀を越したことなぞありゃしない」

「じゃ、そのボールに何か目印でもつけてあったのかい」

「いや、そんなものはないけれど、たまが塀を越して、探して見ると庭の中に落ちていたんだから、間違いっこないよ」

「併しこういう事も考え得るね。君が拾ったボールは、実はその時打った奴ではなくて、以前からそこに落ちていたボールであったということもね」

「そりゃ、そうだけれど、だっておかしいよ」