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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

ことに城介は彼が嫌いであった。

その夕方、城介は風呂に入った。ドラム罐ではなく、甕風呂である。ドラム罐の湯は荒々しいが、甕のは当りがやわらかで、彼等は気に入っていた。それから戦友五人と酒盛りが始まった。酒は白酒である。

城介たちは徴発した民家に居住していた。その一棟には、五人しかいなかった。総員酒好きであった。と言うより、酒好きがその一棟に集っていたと言うべきだろう。宿舎の割りふりも、ほとんど彼等の意志によるものだったからだ。

酔うにつれて、話はいくらでも出た。故郷の話。香港の思い出。女やバクチの話。

その中城介は部屋を降りて、土間にかけた雑嚢の中から、自分の掌に白い粉末を取出し、宴席に戻って来た。アスピリンに似た結晶粉末である。城介は皆の見ている前でそれを口に含み、一気にパイチュウで嚥下した。

「何をのんだんだい?」

加納はそれを見とがめて言った。

「何でもないよ」

城介は答えた。むしろ浮き浮きした口調であった。

「どうせこわれた体だよ。この方がよく効く」

すぐ話題が別に移ったので、粉末のことはそれで済んだ。その夜は歌をうたったりして、皆すっかり酔って寝た。