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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
「大同というとこは、大きな街なんだね」
「いや。大したことはないです。ただあそこにはね、大同炭鉱という露出鉱がある。上質な石炭が出るんで、労務者が相当いたね。労務者は苦力で、日本の民間人と言えばその関係と、満鉄関係者ぐらいなもんかな。とにかく検閲が終って、やれやれ、これであたたかい兵舎に入れると思ったら、これが大間違いです」
お前たちはよく来た。はるばる来たお前らを心から嬉しく、慈父のごとく迎えるなどと言うような、軍人特有のあいさつを賜って、粛々とした行軍が始まった。
「するとはるか彼方に城壁が見える。大同の城壁ですな。あの城壁の中に聯隊があるんだなと、そう思って歩いていると、城壁の手前の広場に、自分らと同じ恰好の連中がたくさんいる。前の列車で着いたのが、小休止みたいな形で待っていたんだね。ああ、お前らよく来たということで、豚汁をバケツに入れたのを――」
「よく豚汁が出るんだな」
「ええ。それが朝飯で、ここで独立歩兵第十二聯隊の編成があって、わたしゃ矢木君といっしょに第二大隊に入れられた。第一大隊は大同ですが、自分らは左雲県というところに行くことになり、弁当をつくってトラックに乗せられたね。