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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

と悲鳴を上げたりした。痛い! と叫ぶと、上から指圧師の叱声が落ちて来た。

「痛い、とおらぶな。感じました、と言いなさい!」

それでもまだ栄介は、急所に触れられるたびに、痛いと叫んで、指圧師から訂正を要求された。しだいに栄介の笑いは、怒りに変りつつあった。痛いのに、痛いと叫んで、何が悪いのだろう。感じました、などとでれでれした言葉がはけるか。彼は枕を胸にかき抱いて、ただもううなるだけにとどめた。

足を最後にして、指圧は終った。体を動かしてみると、背中全部が熱を持ち、腰のあたりは特に地腫れをしているような圧迫感があった。

指圧師はそれから毎日通って来た。医師にそのことを言うと、医師はかすかに首を振った。栄介は聞いた。

「いけませんか」

「ええ。折角鎮静させているのでね、寝た子を無理に引っぱり起すようなものですよ」

初めの中は立って歩けず、座敷箒にすがって便所通いをしていたのに、少しずつおさまって来て、箒なしでもよろめきながら歩けるようになった。しかし回復は早い方とは言えなかった。そんなある日、医師は栄介を立たせ、裸の背中を調べながら、不審そうに言った。

「この骨、ずいぶん突出していますねえ」