轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

台所用品というのは、この鉄鍋だけだ。彼等にとっては、唯一の貴重品なんですよ」

「あんたたちも使ったのかい?」

「ええ。時々使った。便利なもんです」

加納は湯呑みをすすった。

「野戦に出かけた時などにね。内地では春と秋に大演習と称して、富士山麓あたりで演習をやるでしょう。向うじゃそのかわりに、春と秋に掃蕩作戦をやるわけです」

かなり大規模な掃蕩作戦で、一箇月ぐらいかかる。怪我人や病人も出るので、衛生兵もついて行く。乗りものはない。歩いて行くのである。

歩兵と違って小銃は持たないが、拳銃を与えられる。赤十字のついた救急箱を持って歩かねばならぬ。そう楽な行軍ではない。でもそれは初年兵の時だけで、だんだんコケが生えて来ると、驢馬を一頭どこからか持って来て、その背中に袋を振分けにして、薬品を運ばせるようになった。

「その点城介君は大胆でしたな」

薬品だけじゃなく、自分の好きな酒とか、ヨウカンとかパイ缶を入れて、薬品に見せかけて運ぶ。春と秋だから気候はいいが、それでも足の弱い城介には苦労であった。驢馬をさがすのに、城介はたいへん要領がよかったのも、かついで歩く苦痛から逃れようとの熱意からである。