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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

討伐中は部落に泊る。肉や野菜は現地徴集が多く、それらをれいの巨大な鉄鍋で調理するのである。食うものにはそう不自由はしなかったが、困るのは水であった。あちらの生水は飲めない。井戸もすくない。その井戸も数十メートルという深さで、桶一杯を汲み上げるのに、時間がかかる。まごまごしていると、自分の水を得るのに一時間も二時間もかかり、それだけ食事が遅れるということになる。

「討伐さえなけりゃ、軍隊生活もラクなんだがなあ」

城介はしばしば加納にこぼした。

「とにかく早く勤め上げて、帰りてえや」

こうして二年経った。その間にある者は本部に残り、ある者は分隊に派遣され、ばらばらになった。後輩の衛生兵が続々出て来るので、経験のある古兵はどうしても前進基地に転属されるのである。

昭和十四年正月入隊の衛生兵全部に、大同に集結するようとの命令が降った。

その時城介は左雲の近くにいたし、加納は前線の小さな部落の分遣隊に属していた。

「分遣隊と言っても小規模なもんでね、隊長が曹長、全員二十四、五名です。衛生兵一名、通信兵が一名」

部落近くの丘の中腹に横穴を掘り、両側に出入口をつくる。