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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

二百名の同年衛生兵は大同に集まった。召集解除だと思ったら、下士官に志願せよ、との勧告である。戦争は拡大し、あるいは泥沼におちいりつつあった。下士官を充実させて置く必要があるという主脳部の方針からである。皆の気持は拒否に傾いていた。兵隊なら帰れる見込みがあるが、下士官というといわば職業軍人なので、当分帰れない。

その気配を察して、軍医部長が異例の訓示をした。諸君の考えは間違っている。下士官教育をするのはお前たちのためであって、志願して教育さえすませば、予備役にしてすぐに帰す。云々。

「部長のお説教はどうもくさいぞ」

と言い出したのは城介である。一年ぶりに見る城介は、すこし肥って、元気そうに見えた。話がおかしいとは、加納も直感していた。加納だけでなく、同年兵のほとんどが。

結局勧告でなく、半強制的に彼等は試験を受けさせられた。皆その気持がないので、答案用紙にいい加減なことを書いたり、ウソを書いたり、また白紙のまま出したりした。志願の意志のないことを、それで表明したわけである。集団的なレジスタンスでなく、個別的なそれが一致したのだ。

ところが皆合格してしまった。