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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

「試験がすんだら、直ぐに皆は伍長の肩章をつけられてしまった」

加納は笑いながら言った。

「そして予備役伍長となり、現地でもって即時召集になったんだ。帰るどころの話じゃない。一杯食わされたわけです」

それで城介と加納はまた一緒になり、第一野戦病院に転属を命じられた。病院の所在地は厚和である。蒙古での軍隊生活が、こうして始まった。

「城介はその時、もう喘息にかかっていたかね」

栄介はウィスキーの二杯目を注ぎながら訊ねた。

「あれの治療法は?」

「ええ。発作を時々起していたね」

ひねハゼを器用に裂いて、加納は答えた。

「治療としてはアドレナリンの皮下注射、エフェドリンの内服ぐらいなもんですな」

「パビナールは?」

「まだ使ってなかったと思う。オルドス作戦の頃からじゃないかと思うね。でも彼は、自分のことを、あまり語りたがらなかったね」

加納はハゼを鍋にじゅっと投げ込んだ。

「自分は城介君とあんなに仲がよかったのに、身の上話はほとんど聞かなかった。あんたのことは言ってたよ。自分にはふた児の兄がある。おれの方が先に生れたのに、弟になったのは変な話だって、笑ってたよ」

「それだけかい?」