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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

十三

「面倒くさくなったのかな」

「まあそんなこともあるでしょうな」

加納はゆっくりとうなずいた。

「矢木君の屍を火葬にした時、焼け方が早かったね。骨がぼろぼろになった。戦後何かの雑誌で、たとえばヒロポン中毒者の骨は脆くて、直ぐに砕けるという話を読んだ。彼の場合もおそらくそうだったんでしょうな。麻薬が骨まで食い入っていたんだね」

十三

名古屋から受領して来た骨壺の骨のことは、栄介はほとんど覚えていない。やや黝ずんだ破片が少量入っているだけで、脆いか脆くないか、手に触れることはしなかった。母親はしかしそれを自分の頬に当て、うつむいて暫く忍び泣いた。それを見ているのがつらくて、彼は裏庭に行き、菜園にしゃがんで、しばらく無意味に草むしりをしていた。人手不足のせいで、畑は荒れていた。

「お前はまだ死んじゃいけなかったんだ」

彼は口に出して言った。もちろん自殺のことはまだ知らなかった。

「お前の骨を見るまでは、お母さんは信用しなかったんだぞ」

十分ほど経ち、青臭くなった手を台所で洗い、座敷に戻った。幸太郎が来ていた。幸太郎は相変らず肥っていた。一般の物資はそろそろ窮屈になっていたが、海産品は軍の需要物なので、つぶされるおそれはない。