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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

とにかくあの頃は、爺さん婆さんの年齢の幅が広かった。順々に年老いて婆さんになるのではなく、気分的に服装的に一挙にがくんと婆さんになったものだ。

その婆さんが、気が強過ぎたのが、いけなかった。あるいは度々そんなことがあって、婆さんも腹に据えかねていたのかも知れない。

城介たちも運が悪かったということも言える。

昼休みに中学校の塀を越えて、城介は級友たち三人と、あたりを見廻しながら、そっと当り屋に入った。当り屋の油障子には、的に当った矢の絵が、煙にすすけている。奥には大きな釜が据えられ、その下で薪がぼんぼん焚かれているので、いつも湯がぐらぐらと煮立っている。外から入ると、眼鏡がたちまち曇るほどだ。城介らは手をすり合わせながら卓につき、

「素うどん」

「素うどん」

と注文した。うどんが運ばれると、細ネギをごっそりかけ、一息につるつるとすすり、汁まで余さず飲んでしまう。うどんは噛むものでなく、咽喉で味わうものだというのが、中学生のダンディズムであった。そんな愚かなダンディズムは、どの時代でもどの場所でも、時々見かけられる。

しかし城介たちが当り屋を訪れたのは、単に強がりやダンディズムのせいではなかった。