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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页

青空文庫

それじゃ兄貴、あんまりこのおれが可哀そうだとは思わないか」

衆議一決して、逃走することになった。当り屋のおやじが出前のために釜前から姿を消すのを待って、四人はゆっくりと立ち上った。店番の婆さんに顔をかくして障子をあけ、そっと道路の様子をうかがい、いきなり走り出した。店番の婆さんがびっくりして、しめ殺される鶏のような声を立てて、立ち上った。足袋はだしで土間へ飛び降り、四人の後を追って道に飛び出した。

婆さんなので耳も遠いし、眼もかすんでいるだろう。まして追っかけて来ることはあり得ない。と思ったのが、城介たちの誤算であった。婆さんはよたよた走りながら、大声でわめいた。

「こら、待て。こら、待てえ」

城介は背を丸めて走った。一番遅れて、うしろを見い見い走っていた。

「これはうるさいことになったぞ」

鈍足だったのは、背後が気になったせいでもある。先頭から順々に路地に曲り込んだ。彼も曲り込もうとして、婆さんを振り返ると、婆さんは溝板を踏み外して、片足を溝に突っ込み、前のめりに倒れていた。婆さんの絶叫がやんだのは、そのためであった。彼は曲り角で走りやめた。彼の気持は引き裂かれた。