轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
福次郎が箱膳を蹴飛ばしたからである。彼の家では、父親だけが箱膳を使い、他の家族はチャブ台で食事することになっていた。
「もう絶対に戻って参りませんから――」
どんな理由で、父親と母親が衝突したのか判らない。しかし彼の記憶では、彼等はすでに食事を終っていたので、福次郎は遅く戻って来たのだろう。そして酒に酔っていた、と栄介が今思うのは、皿小鉢といっしょに、畳の上に廻転焼き(タイコ焼きみたいなもの)が散らばっていたような気がするからである。福次郎は酔って戻る時、いつもお土産に、廻転焼きを買って来る習慣があったのだ。
「お母さん。待って。行かないで!」
幼ない栄介は泣き叫びながら、母親の背にしがみついた。母親の背中はかたくなに動かず、背中全体で栄介を拒否しているように感じられた。しかし必死に彼はそれに取りすがった。
「お母さん。行くんなら僕も連れてってえ!」
兄の竜介はまっさおな顔で、部屋のすみに立ちすくんでいた。納戸は暗かった。裸電燈が天井からぶら下っていた。電圧も低かったのだろう。あの頃の電球は、今のと違って、下部が丸くつるつるとはしていない。するどいトゲみたいなものが突出していた。