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くるいだこ
狂い凧
梅崎 春生
「群像」講談社、1963(昭和38)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 111,430 字 · 226 页
それから営門を出て、とつとつと駅の方に歩く。
「何て愚劣なことだろう」
「何てバカなことだろう」
自分の不機嫌をなだめるように、ぶつぶつ呟きながら彼は歩いた。名古屋に一泊して、明朝故郷に戻る予定だったが、もう泊る気はしない。
「すぐ汽車で帰ろう」
駅の食堂で食事を注文して、彼はそう思い定めた。遺骨は肩から外し、卓上に安置してある。つまり彼と向い合ったような恰好になっている。城介の骨がそこに入っているという実感はまだなかった。彼は下関の赤提燈の店での城介の言葉を思い出した。
「お前は自分で決着をつけると言ったが、とうとう出来なかったじゃないか」
彼は心の中で城介の骨に話しかけた。
「人間は生れてしまえば、いろんなものにからんだり、からまれたりして、一代では決着出来なくなるものだ。次第に引きつがれたり、あいまいに消失したり――」
食事が来た。遺骨と向い合って、彼だけが食べた。何だか落着かない気がした。
「遺骨というのは、妙なものでね」
栄介は両手を頭のうしろに廻し、私に言った。
「あれは肩から吊し、手で捧げ持ってこそ、恰好がつくもんでね。食事する時などは、処置に困る。