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ねぎさまみやた
禰宜様宮田
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,662 字 · 68 页
俺の心に済まないから、どんなことがあっても、この金ばかりは決して使ってはならないと、お石に堅く云いつけて、彼は彼女に知らさないようにして、古葛籠の底へ隠してしまった。そして自分でも二度と見ようとはしなかったので、あっちこっち、散々索しまわったお石が、とうとうそれを見つけ出して、何ぞのときの用心にと、肌身離さず持っていようなどとは、夢にも知らなかった。
裏から紙を貼ってある一枚の十円札、まだ新しいもう一枚の十円と五円とは、黒っぽい襤褸にくるまって今もやはりあの古綿の奥に入っているものと、彼は思っていたのである。
そして、独り遺った息子の六に、唯一の頼りを感じて暮して行くはずだった自分の心が、日を経るに従ってとかく去った娘達の上にばかり傾けられるのを知った。赤坊のうちから眺めて暮して来た彼女等に対して、毎日顔を合わせ、いるにきまったものとなっていたときは、別にそう大していないときの淋しさも思わず、また彼女等が家庭生活にどれほどのうるおいを与えているかも、気づかなかった。
けれども、いなくなって見ると、一種異様の淋しさと物足りなさがある。
ちょうど、絶えまなく溢れ出していた窓下の噴水が、急にパタリと止まってしまったときに感じる通りの心持――何でもなく耳馴れていたお喋り、高い笑声が聞えない今となると、たまらなく