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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

吉川英治『私本太平記(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:私本太平記、私本太平記、私本太平記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 页

青空文庫

――首を長くして急援を待つ赤松の白旗城も、その他の味方も、すでに尊氏がここまで来たと知るならば、ここ一番の持ち支えはするだろう。――尊氏はそう見たのである。そして先を急ぐよりは、まず充分な必勝の準備をと、それに重点をおきかえていたのであった。

数日のうちに、浦々は船に、陸は軍馬にうずまった。

ここからも尊氏は、諸国の武士へ教書を発して、

――急ぎ参じ候え

と、東上一致の大同をうながした。

兵はふえ、兵糧も集まり船も寄って来る。ここは結集と団結に地の利であったのみでなく、古来、

串崎船

と名のある串崎も、遠くない。

尊氏は、長門ノ守護、厚東ノ入道武実を呼んで、

「串崎の腕ききの船頭どもを、厚くもてなして、水軍に配属するよう」

と、いいつけた。

ところが、串崎の船頭は領主でもうごかしえない独自な自治と特権をもっている。――というのは、源九郎義経が平家を壇ノ浦に討ったさい、その水案内にはここの串崎船が先陣をつとめ、その功で以来「――日本国中、津々浦々、どこに寄っても、串崎船は公役を受くるに及ばず」という公役免除の墨付をうけており、いかなる軍官の命でも、おいそれとは応じない気質をもっていたのだった。