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あきのかご

秋の駕籠

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,356 字 · 35 页

青空文庫

「だから肚が立つのよ、いつもは猫をかぶってやがって、ひと皮むけばげじげじ閻魔ときやがる」

「げじげじ閻魔だって」

「いつも無精髭を伸ばしてるし、胸からなにから毛むくじゃらで、おまけに二人の喧嘩でおっかねえ顔をしているから」

「ちょっと待ってくれ」六助は眼をすぼめて云った、「そいつは、まさか、よもや、おれのことじゃあねえだろうな」

「おめえのことよ」中次は盃を持った手で自分の膝を叩いた、「よそのやつのことなら怒りゃしねえ、おめえのことを云ったから怒ったんだ、おめえのことをそんなふうに云ったから」

「おれのことをだな、お梅が」

「げじげじ閻魔ってよ」

六助はふくれた。自分でもふくれたのがわかった。中次は友の顔を見て頷いた、友の顔がふくれたのは怒ったので、怒るのが尤もだという頷きようであった。

「ふざけた娘だ」六助は云った、「こうなると云ってやらなくちゃならねえ、おめえにはおれのことを悪く云い、その口でおれにはおめえの悪態をつく、ようし、ひとつこれからいってとっちめてくれよう」

「おれの悪態をついたって」

「癖になる」六助はひょろひょろと立った、「でかけていって、ひとつぎゅっというほど」