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あきのかご

秋の駕籠

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,356 字 · 35 页

青空文庫

そして、やがて、それが混沌と重なり合って、子守り歌のように彼をあやし、彼の意識を昏ましてしまった。

明くる日、六助は猛烈な宿酔のために、一日じゅう苦しみとおした。べらぼうに喉が渇き、頭が割れるように痛み、ちょっとでも起きようとすると天地が逆転するような眩暈におそわれた。中次は早くから起きたらしい。六助の世話をしたり、どこかへ出かけたり、帰って来たと思うとまた出ていったりした。このあいだに中次は、六助に向っていろいろなことを云った。六助にはよくわからなかった。苦しさのためにそれどころではなかったが、そのなかで箱根とか、五両とか、通し駕籠とかいう言葉だけは聞きとることができた。宿酔は灯がつくと治るという。本当かどうか、六助の宿酔も日が暮れると治った。そこで初めて、箱根ゆきのことをはっきり聞いた。

「案外だが人の好い旦那らしい」と中次は云った、「ちょうど湯治にでもゆきたいと思ってたところだから、二人の仲直り祝いに稼がせてやろう、よかったら二三日湯につかって来るがいい、という話なんだ」

「うますぎる」六助が浮かない顔で云った、「垢だらけの足で桐の駒下駄を貰うような心持だ」