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あきのかご
秋の駕籠
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,356 字 · 35 页
役人は皮肉に微笑した、「どんなわけがあるにしろ、箱根まで五両とは法外な駄賃だ、それをまに受けるとはきさまたちのほうがどうかしているぞ」
六助は「ぎゃふん」と云いたかった。役人の言葉はそう云わせるような調子だったし、六助としてはまさにそう云いたいような気持だった。
「そうするとどうなるんですかい」中次が肚を立てたように云った、「あっし共はまだ一文も貰っちゃあいねえ、此処まで手弁当で来て、江戸へ帰る小遣にも困ってるんですがね」
「諦めるんだな」役人は笑った、「欲にひっかかった罰だ、これからは気をつけるがいい」
六助と中次は茫然と立停った。
役人と米村の手代という男とは、いそを伴れて、(あとから二挺の駕籠も一緒に)大磯のほうへ去っていった。そっちに代官所でもあるらしい、……こちらの二人は道の上に駕籠を置いたまま、ながいこと気の抜けたように立っていた。
「しょうがねえ」やがて六助が云った、「帰るとしようか」
中次は頷いて、先棒のところへいったが、そこで六助のほうへ振返った。六助もそっちを見ていたが、とたんに二人一緒に云った。
「おめえはおれを悪く思ってるんだろう」