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あきのかご

秋の駕籠

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1952(昭和27)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,356 字 · 35 页

青空文庫

二人とも崩れるようなにこにこ顔で、気も浮きあがるというようすだった。

「禍い転じて福となるってのはこのことだな」六助が云った、「あの米村の手代って人はよっぽど嬉しかったらしい」

「金がそっくり返ったんじゃねえか」中次はわざと冷淡そうに云った、「諦めていた金がそっくり返ったんだ、このくらいのことはあたぼうだ」

「だっておめえ十両だぜ、箱根までいって五両、それが倍になったんだ、盗めば首の飛ぶ高だぜ」

「驚くにゃあ当らねえ」中次が云った、「五両が十両になるのもあたぼうだ、事の起こったのがおめえ大磯じゃねえか」

「大磯ならどうしてあたぼうだ」

「大磯は曽我兄弟に縁のある土地だろう、とすればおめえ五りょう十りょうだ」

「この野郎」と六助が喚いた。

「ざまあみろ」と中次が笑った。街道には馬の鈴が平穏に聞えていた。