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そこつひょうばんき

粗忽評判記

山本 周五郎

「富士」大日本雄辯會講談社、1929(昭和14)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,942 字 · 28 页

青空文庫

と明敬はうるんだ眼で相手をじっと見た。「そんなに今日の招きを悦んでくれるか」「それが分ってもらえないか」

「まあ待ってくれ、事実を云おう」明敬はふいと兼光を置いて容を正した。「じつは今日の招きはこのほうの心から出たのではないのだ」

「なにを云う壱岐侯」

「愛宕下の志摩守を招くよう命じたのを、久之進が粗忽で間違えたのだ、……しかしよく間違えてくれたと思う、式台でこなたの顔をひと眼見たとき、……自分はどうかして泣くまいと、歯を喰いしばっていた、正直に云う、招いたは久之進の粗忽だ、けれども今こそ改めて、心から招きたい、出雲侯、受けてくださるか」

「そうか、そうだったのか」信継は頷いて云った。「よく打明けてくれた、云うまでもなく心からお受けをするよ、その代り兼光も受けてもらいたい」

「いや、これは粗忽の褒美として久之進に遣ってくれ、この粗忽はそれだけの値打がある」「久之進にはべつに土産があるのだ」信継が微笑しながら、「なあ久之進」とこちらへ振返った。「三人張の弓を折って、せっせと厨しごとの稽古をしている者がある、そのほうよもや知らぬとは云うまいな」

「いやこれはもってのほかの仰せ」