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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

村子 ……(飲み終って)心臓の――(と意味なくいいかけて、ビクッとしてあたりを見まわして、自分が陥りかけていた夢のような状態から醒め、佐山を見る)……あんたはそいじゃ、助かりたくはないの?

佐山 ……助かりたい。……俺が一番助かりたがっているのかも知れんな。(ひとりごとになっている)

村子 ……(花岡に目を移して)どうしたんだろう、この人は? (花岡にあてて)ねえ、あんた? (花岡は振り向きもしないで、サツの計算をつづける。……佐山に)ダメかしら、この人?

佐山 うん?

村子 いえさ――

佐山 ……君だって、ズーッと、そうだった。

村子 そう? (びっくりしている)

佐山 音が聞えるといい出してから、なおった。

村子 ……だけど、ホントに聞いたのよ。聞いたと思った。

佐山 ……そうなんだ。聞いたと思った――ということは、聞いたことなんだ。いいさ、そりゃ。……俺だって、ホントはヘンだ、きっと。みんな、そうさ。いや、俺たちだけじゃないだろう。外にいて、暮らしていたって同じだろう、みんな。こんなふうに、年中――(と花岡をアゴで指して)してる人が、いっぱいいる。……いいんだよ、それも。