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たいない
胎内
三好 十郎
「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页
五
後は口の中でいいながら、うつぶせにたおれる)
佐山 ちき――こ、こ! (上から、花岡の顔や胸をビシッ、ビシッとなぐる。目のわきから血が吹き出している)ツ、ツ、ツ! この――(膝にかみついて離さない花岡。その顔を更になぐりつける)ちきしょうッ! この!
村子 ……助けて――(組み合わせた両手を、うつぶせになった額のところに持って来て、二人に向かって祈るようにするが、もう声が出ない)
五
春がきた
春がきた
どこに来た
山にきた
里にきた
野にも来た
(暗い中で、幼女のようなあどけない歌いかたで、低い女声が歌う。それが村子の声であることが、しばらくは、わからない。……歌は、くりかえす。その半ばぐらいのところで、ボストン・バッグのガンドウのスポットが、右手の黒い壁の一ヵ所を照らし出し、光は壁の上を這ってすこし動いて、壁の前に立っている村子をとらえて、とまる。……さらに衰弱して、目ばかりになってしまった顔と、いまだに女体の線を失わない半裸の村子が、壁に向って立ち、ほとんど唇を動かさないで歌っている)
花岡の声 (たえだえに弱り果てた語勢。その死にかけているような、とぎれとぎれの低い調子と、誇張されたフテブテしい言葉の意味との甚だしい背反が、奇怪にもコッケイにもきこえる)……おい、よせ! そんな、ヘンな歌、よせよ! よせといったら、よさ