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たいない

胎内

三好 十郎

「中央公論」1949(昭和24)年4、5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,766 字 · 136 页

青空文庫

おい君、さ、佐山君!……おれが悪かった。かんべんしてくれ。……おれたちゃ、こうして、もう、間もなく、なにかもしれん。……し、しかたがない。(あえぐ)く、苦しい。……俺は、こ、こ、俺は、こわいんだ。……おそろしい。どうなるんだい?……だんだん苦しくなって――そいで、どこへ、どうなるんだ?……ど、どこへ行くんだろう? ワ、ウ、ウ、フ! (歯の根が合わなくなっている)……こっちへ来てくんないか、おい! あやまる。ね、いいじゃないか、頼む。俺が、悪かった。おい君、な、なんとかいってくれよ! (弱い弱い哀願の声)たのむよ。……ひ、一人でいるなあ、たまらん。……え、佐山君、どこにいるんだ? ど、どのへんにいるんだよ?……(ガンドウを押し動かしながら、左手の方へ這いずって行きかける)

佐山の声 (左手の闇の中から、これも、弱り果てて地面に寝たままの衰えた声であるが、しかし、ほとんど平静に近い調子のために、花岡の恐怖に打ちふるえる言葉がつづいた後では、異様なくらい冷徹に洞穴いっぱいに鳴りひびくように聞える)来るなよ! 寄って来るな。……いやだ俺あ。……みんないやだ、人間は。