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しば、あざぶ

芝、麻布

小山内 薫

「東京日日新聞」1927(昭和2)年10月25日~30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,170 字 · 15 页

青空文庫

化物屋敷

前が宮様で、その隣が公園だからでもあろう。私はあんな住心地の好いところを知らない。

併し、私のいた明舟町の家では、不愉快な事件が起った。風呂場がないので、家の者はみんな銭湯へ行った。ところが、子供が銭湯で水疱瘡という奴をしょって来た。それがよくなると、今度はみんなが虫に刺された。二つずつ赤い跡がついて、ひどく痛むのである。

「南京虫だ。」

誰かがそういい出した。そこいら、気をつけて見ると、柱でも床でも、隙間という隙間には、みんな巣を食っていた。

私は「南京虫駆除」の広告を新聞で探して、そこへ手紙を出した。洋服を着た若い男が二人、妙な器械を持って来て、水蒸気で家中を蒸した。お陰で、虫の掃除は出来たが、その代り、大事な本が一緒に蒸されて、みんなべとべとになってしまった。

化物屋敷

ちょうど、その頃、家内の姉が大勢の家族をつれて、摂津の尼ヶ崎から東京へ出て来た。姉の夫がアメリカへ行くので、住居を東京へ移すことになったのである。

そこで、姉の一家族と私の一家族とが一緒に住めるような広い家を探すことになった。姉の方は女子供ばかりで心細がっているし、私の方は南京虫で嫌気がさしているので、急にこういう相談が出来たのである。