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わかきひのせっつのかみ
若き日の摂津守
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,437 字 · 47 页
「重太夫」と光辰は悲しげに云った、「みんなにくつろげと云え」
重太夫は軽く低頭しながら、舌打ちをした。
「まるで五六歳の子供だ」と重太夫は望月吉太夫に囁いた、「江戸で大城へあがっても、片刻として眼を放せません、まことにしんの病めることです」
「お顔だちは源三郎(光央)さまとよく似ておられるようですな」
「性質が似なくて幸いです」と重太夫は酒をすすりながら云った、「源三郎さまにはみな肝をひやしましたからな」
「いかにも」と吉太夫はまじめに頷いた、「いかにも」
その夜、おたきは二の丸御殿の寝所へあがった。老女菊岡の付添いで、作法どおり、控えの間で髪を解き、はだかになり、寝所へはいった。そして、おたきが褥にはいるのを見届けてから、菊岡は退出し、代って二人の女中が、控えの間で宿直をするのであった。――その部屋は寝所の東に当り、侍たちの宿直の間とは反対の位置にあったし、あいだは塗籠になっているため、むろん往き来はできないようになっていた。
初めての夜から七夜、菊岡も控えの間に宿直をした。それはおたきから「はい」という返辞を聞くためで、七夜めの明けがたにその返辞があり、それからは規則どおり、宿直をせずに退出するようになった。