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わかきひのせっつのかみ

若き日の摂津守

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1958(昭和33)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,437 字 · 47 页

青空文庫

は読んだら焼けというが、焼けば読んだ証拠になるだろうし、罠だとすれば取返しのつかないことになる、……おたき、おまえならどうするか聞かせてくれ」

「わかりません」おたきは考えてから、力なくかぶりを振った、「わたくしにもわかりませんけれど、江戸でなすったようになさるほうが無事ではございませんでしょうか」

「それでは他の者にみつかるおそれがあろうし、民部が本心だとすれば無事には済まないことになるぞ」

「おそらく、これをさし入れた者が取戻すと思いますけれど、もし夜明けまでそのままにしてありましたら、わたくしがよいように致します」

「しかし、どうするのだ」

「塗籠へしまっておきます」とおたきは答えた、「そして、もしも咎められたときには、知らずに片づけたと申します」

光辰は考えこんだ。石にでもなったように身動きもせず、ずいぶん長いあいだ黙って、雪洞の灯を見まもったまま、じっと考えこんでいたが、やがておたきのほうへ振向いて、にっと微笑し、口のまわりを拭いた。

「十年待ったとて、同い年ゃ同い年」と光辰は秘密をあかすような、たのしげな表情で囁いた、「死ぬまで待っても同い年は同い年、――いい唄を聞いたらしいぞ、おたき、いい唄だ、いまのおれにはなによりの唄だ」