轻松读懂日语经典作品
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なおこ
菜穂子
堀 辰雄
楡の家 第一部「物語の女」山本書店、1934(昭和9)年11月<br> 楡の家 第二部「文学界」1941(昭和16)年9月号<br> 菜穂子「中央公論」1941(昭和16)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,758 字 · 173 页
お前は暖炉の傍らに腰かけたまま、そこに近づいていった私の方へは何か怒ったような大きい目ざしを向けたきり、何んとも云い出さなかった。私も私で、まるできのうも私達がそうしていたように、押し黙ったまま、お前の隣りへ他の椅子をもっていって徐かに腰を下ろした。私はなぜかお前の目つきからすぐお前の苦しんでいるのを感じ、どんなにかお前の心の求めているような言葉をかけてやりたかったろう。が、同時に、お前の目つきには私の口の先まで出かかっている言葉をそこにそのまま凍らせてしまうようなきびしさがあった。どうしてそんな風に突然こちらへ来たのかを率直にお前に問うことさえ私には出来悪かった。お前もそれがひとりでに分かるまでは何んとも云おうとしないように見えた。漸っとの事で私達が二言三言話し合ったのは雑司ヶ谷の人達の上ぐらいで、あとはそれが毎日の習慣でもあるかのように二人並んで黙って焚火を見つめていた。
日は昏れていった。しかし、私達はどちらもあかりを点けに立とうとはしないで、そのまま暖炉に向っていた。外が暗くなり出すにつれて、お前の押し黙った顔を照らしている火かげがだんだん強く光り出していた。