轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

むし

虫

江戸川 乱歩

一~四「改造 第十一卷第六號 六月號」改造社、1929(昭和4)年6月1日<br>五~十二「改造 第十一卷第七號 七月號」改造社、1929(昭和4)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,053 字 · 86 页

青空文庫

暗くなると、彼は机の上の燭台に火をともして、夜更けまで読書をしたり、奇妙な感想文を書き綴ったりすることもあったが、多くの夜は、土蔵の入口に錠を卸して、どこともなくさまよい出るのがならわしになっていた。極端な人厭いの彼が、盛り場を歩き廻ることを好んだというのは、甚だ奇妙だけれど、彼は多くの夜、河一つ隔てた浅草公園に足を向けたものである。だが、人嫌いであったからこそ、話しかけたり、じろじろと顔を眺めたりしない、漠然たる群集を、彼は一層愛したのであったかも知れぬ。その様な群集は、彼にとって、局外から観賞すべき、絵や人形にしか過ぎなかったし、又、夜の人波にもまれていることは、土蔵の中にいるよりも、却って人目を避ける所以でもあったのだから。人は、無関心な群集のただ中で、最も完全に彼自身を忘れることが出来た。群集こそ、彼にとってこよなき隠れ簑であった。そして、柾木愛造のこの群集好きは、あの芝居のはね時を狙って、木戸口をあふれ出る群集に混って歩くことによって、僅かに夜更けの淋しさをまぎらしていた、ポオの Man of crowd の一種不可思議な心持とも、相通ずる所のものであった。