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むし
虫
江戸川 乱歩
一~四「改造 第十一卷第六號 六月號」改造社、1929(昭和4)年6月1日<br>五~十二「改造 第十一卷第七號 七月號」改造社、1929(昭和4)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,053 字 · 86 页
九
何という不思議な相似であろう。柾木はそれを思うと、急に目の前の死骸がゾッと総毛立つ程恋しくなって、それが遠い昔のお人形でもある様に、芙蓉の上半身を抱上げて、その冷たい頬に彼の頬を押しつけるのであったが、そうしてじっとしていると、まぶたが熱くなって、目の前がふくれ上って、ポタポタと涙が流れ落ち、それが熱い頬と冷い頬の合せ目を、顎の方へツーツーと辷って行くのが感じられた。
土蔵の中は全く別世界であったし、相手が魂のない生人形であったから、柾木はあらゆる恥を忘れ、子供の様に顔をしかめて、しゃくり上げながら、泣きたい丈け泣き、喋り度いことを喋った。二人の顔の間が、○○○○○○○○、○○○○○○○○○○○○○○、○○○○、○○○○○○○○○○○○○○○○、○○○○○○○○○○○○○○。○○○○○○○○○○、○○○○○○○○○○○、○○○○○○○、○○○○○○○○ばならなかった。
か様にして、厭人病者と死骸との、此世のものならぬ狂体は、不気味に、執拗に、その夜一夜、夜のあけるまでも、続けられたのである。
九
その翌朝、北側の小さな窓の、鉄格子の向から、晩秋のうららかな青空が覗き込んだ時、柾木愛造は、青黒く汚れた顔に、黄色くしぼんだ目をして、部屋の片隅の、菩薩の立像の足元にくずおれていたし、芙蓉の水々しいむくろは、○○○○○○○、