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じゃせいのしゅうねん

蛇性の執念

大倉 燁子

「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,981 字 · 38 页

青空文庫

でも先生はどうお考えになりまして? それが事実だとしますと、一言も云わずに死んで行った文夫の心持も分るような気もしますけれど――』

『それで武雄さんはお兄様からあなたの将来を頼まれたから、あなたを保護するためにも結婚しなければならないと仰しゃるんでしょう?』

『ええ、兄の遺志でもあるから、と申して度々私に迫りましたの、その度毎に私はこの家を逃げ出してしまうかと思いましたんですけれど、御存じの通り行く処もないし、それにもう一つこの家をどうしても離れられなかった理由がありましたの』

『このお家を離れては文夫さんにすまないとお思いになったの?』

『いいえ、全然違います』

『ではどんな理由?』

『先生はどうお思いになりまして? 文夫と武雄と似て居ますか?』

『さあ、私はちっとも似ていらっしゃらない、御兄弟のようじゃないと思いますけれども――。御性質だって、御風采だってまるで反対じゃありませんか』

『そうでしょう、皆様が兄弟とは思えないと仰しゃいます。処がね、不思議なことには一時私の目にはとても似ているように見えましたのよ。ちょいとした表情や動作などに懐しい文夫の面影を見ることがあったんでございますの。