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おやどりことり

親鳥子鳥

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页

青空文庫

と言いながら、絹子さんは坐った。

「子供が学校へ行ってしまわないと、碌々お話も出来ませんわ」

「結構でございますよ。何うぞお構いなしに願います」

「昨日は明治神宮でございましたね?」

「ええ、神宮から招魂社と遊就館を拝見させて戴きました。それから帰りに陸軍省と参謀本部へも寄りました」

「日比谷は?」

「参りません。不良少年が出るそうでございますね?」

「まさか」

「でも然う仰有いましたわ」

「お祖父さんは軍人ですから、御案内はいつもあの方面丈けでございますのよ。余り堅過ぎますわね」

とお母さんが笑った。

「私、もう大抵のところは拝見して居りますから、家で遊ばせて置いて戴けば結構でございますのよ」

「今日は源太郎が御案内申上げますよ。源太郎なら何処へでもお望みのところへ参りますわ」

「でもお忙しいんでしょう?」

「いいえ、構いませんよ」

と僕は夏行って世話になるから義理がある。

「然う」

と絹子さんもそれは分っているようだった。

少時話している中に、

「叔母さん、私、叔母さんに御相談がございますのよ」

と絹子さんは薄笑いをしながら言い出した。叔母さんではないけれど、叔母さんと呼ぶ。