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おやどりことり
親鳥子鳥
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1925(大正14)年10月~1926(大正15)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,828 字 · 181 页
とお父さんは悲観してしまう。
「余所の子供でも風邪ぐらいひきますよ。丈夫な子ばかり外で遊んでいるんですわ」
とお母さんは看護に一生懸命で夜の目も碌々寝ないのだから、その上苦情を言われては引き合わない。
「それにしても三人も四人もひくことはないよ。真正に厭やになってしまう」
とお父さんは未だ愚痴をこぼす。
「あなたが大切にし過ぎて厚着をさせますから、皮膚が弱くなるんでございますわ」
とお母さんは日頃の干渉を問題にする。お父さんは自分が寒がりだから、子供に厚着を強いる。
「寒いことはありませんわ」
「いや、寒いよ。暖か過ぎる分には構わないんだから、何枚でも着せなさい」
「でも抵抗力が弱くなりますわ」
「それは医者の理窟だ。兎に角風邪さえひかせなければ宜いんだからね」
というような意見の相違は屡耳にするところである。
子煩悩なお父さんには子供の病気が何よりも辛い。誰か一人寝ていると食慾が衰えるのでも分る。社から電話をかけて、熱の加減を問い合せる。帰宅も早くなる。玄関へ入ると直ぐに、
「何うだね? 千代子は」
と訊く。好い経過を期待していると思えば、お母さんも骨が折れる。